SCS評価制度を取得するメリットとは?更新時の注意点も解説|ハチマルヤ合同会社(808)
「SCS評価制度、取引先から取得を求められそうだけど、実際にどんなメリットがあるのか、費用に見合うのか判断がつかない。。」
そう感じている経営層・意思決定者の方は多いのではないでしょうか。SCS評価制度に関する記事の多くは、メリットだけを強調するか、費用だけを解説するかのどちらかに偏りがちです。両方を並べて投資対効果として判断できる情報は、まだ多くありません。この記事では、ハチマルヤ合同会社(808)のコンサルタントが、SCS評価制度を取得することで得られる具体的なメリットを整理します。あわせて見落とされがちな費用・維持負担も示し、投資対効果として判断するための考え方を解説します。
SCS評価制度そのものの全体像がまだ分からない方は、先に以下の記事をご覧ください。
→SCS評価制度とは?2027年から始まる新制度の全体像と対象企業
SCS評価制度を取得する4つのメリット
SCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)を取得することで得られるメリットは、大きく4つに整理できます。
①取引継続・新規受注の「パスポート化」 発注企業ごとに異なるセキュリティチェックシートへの個別回答が必要だった業務から解放されます。取引先が10社あれば10通りのフォーマットに答えていた作業が、★という共通指標を提示するだけで済むようになり、営業・情シス双方の対応工数が減ります。
②取引先からの信頼向上 自社の対策レベルを客観的な指標で可視化できるため、新規取引先との商談でも説明がしやすくなります。「対策はしています」という口頭の説明よりも、第三者が関わる評価制度の★を提示するほうが、初対面の相手には伝わりやすいという実務上の効果があります。
③サプライチェーン攻撃の踏み台になるリスクの低減 自社の対策が手薄なままだと、取引先を経由した攻撃の踏み台にされるリスクがあります。近年は自社そのものではなく、セキュリティ対策が手薄な取引先を経由して侵入するサプライチェーン攻撃が増えています。SCS評価制度への対応は、この種のリスクを下げる実務的な効果も持ちます。
④経営層への説明・社内意思決定のしやすさ 「★3を取得済み」「★4相当の対策済み」という共通言語があることで、社内の経営会議や取締役会での説明コストが下がります。対策の進捗を数値・レベルで示せる点は、専門用語に不慣れな役員にも伝わりやすく、経営層にとって扱いやすい材料です。
受注側のメリット・発注側のメリット
自社が「発注される側(受注側)」か「発注する側」かによって、効いてくるメリットは変わります。
| 立場 | 主なメリット |
|---|---|
| 受注側 | チェックシート対応の工数削減、取引継続・新規受注への直接的な効果 |
| 発注側 | 取引先ごとの調査業務の標準化、サプライチェーン全体のセキュリティ水準の底上げ |
受注側にとっては、取引継続・新規受注に直結する効果が大きなメリットです。発注側にとっては、取引先ごとに異なる基準で行っていた調査業務が標準化され、確認作業そのものの負担が減ります。自社がどちらの立場でメリットを受けるのかを最初に整理しておくと、社内での説明もぶれません。両方の立場を兼ねる企業(自社が発注する側でもあり、より大手から見れば受注側でもある企業)では、双方のメリットを併せて説明できます。
メリットは「取得すれば自動的に続く」わけではない
ここまでのメリットだけを見ると、取得すれば安泰だと感じるかもしれません。しかし、SCS評価制度は「取得して終わり」の制度ではない点に注意が必要です。
★3の有効期間は1年、★4の有効期間は3年です(出典:IPA「SCS評価制度の詳細情報」)。期限が来れば更新の手続きが必要になり、更新のためには教育記録・パッチ適用記録・復旧テストの記録などを継続的に蓄積しておく必要があります。★4は有効期間が長いぶん、更新までの間に組織や体制が変わり、記録の担当者が不在になってしまうケースにも注意が必要です。
取得直後は良くても、運用の仕組みを整えないまま時間が経つと、更新時に慌てて記録を集め直すことになりかねません。担当者の異動や退職があっても記録が途切れないよう、属人化させない運用の仕組みを最初に作っておくことが、更新時の負担を下げる鍵になります。メリットを継続的に得るには、取得後の運用体制まで見据えておくことが欠かせません。
メリットに対してどれくらいコストがかかるのか
投資対効果を判断するには、メリットだけでなくコストの構造も知っておく必要があります。SCS評価制度対応にかかる費用は、おおよそ次の4つに分解して考えられます。
| 費用区分 | 内容 |
|---|---|
| 制度費用 | 申請・登録にかかる費用 |
| 対策実装費用 | 不足している技術的対策(アクセス制御・ログ管理・脆弱性対応など)を導入する費用 |
| 文書化・確認費用 | 規程・記録の整備費用、★3であれば専門家確認にかかる費用 |
| 維持費用 | 更新に向けた記録の継続的な蓄積・運用にかかる費用 |
このうち多くの企業で最も変動が大きいのが対策実装費用です。すでにISO27001等で一定の対策が整備済みの企業と、これから対策を始める企業とでは、必要な投資額が大きく変わります。
★3は専門家確認付き自己評価のため、★4のような第三者評価・技術検証にかかる費用は発生しません。★4を目指す場合は、この検証費用が追加でかかる点を踏まえておく必要があります。
なお、具体的な費用額は自社の現状のセキュリティ対策レベルによって大きく変動します。民間コンサル各社が費用の目安を公表しているケースもありますが、自社にそのまま当てはまるとは限りません。正確な費用感は、複数社から見積もりを取って比較するのが安全です。
経理・財務部門に説明する際は、上記4区分を2つに分けて示すのがおすすめです。「今回の投資で新たに発生する費用」と「毎年発生し続ける維持費用」を分けることで、単年度の投資判断としても継続コストとしても理解を得やすくなります。★3から始めて後から★4を目指す場合、対策実装費用の一部は引き継げるため、段階的に投資する選択肢も検討に値します。
経営層への説明で「メリットとコストをどう並べて話すか」で悩む場合は、以下の記事も参考にしてください。
→ SCS対応の予算が通らないときの考え方|経営層への説明の組み立て方
★3と★4、メリットの大きさはどう違うのか
SCS評価制度には★1〜★5のレベルがあり、企業は自社の役割やリスクに応じて目指すレベルを選びます。
| レベル | 位置づけ | 評価方式 | 要求事項数 |
|---|---|---|---|
| ★3 | 一般的なサイバー脅威への対処 | 専門家確認付き自己評価 | 26件 |
| ★4 | 被害拡大防止・サプライチェーン強靭化 | 第三者評価+技術検証 | 43件(★3の26件を含む) |
要求事項の詳細は、IPA「SCS評価制度の詳細情報」で公開されています。

ここで注意したいのが、「階層」と「★」は別の概念だという点です。サプライチェーン上のどの位置にいるか(階層)と、どのレベルの評価を受けるか(★)は、混同されやすいものの本来は別物です。取引先から求められる★のレベルは、階層だけで自動的に決まるわけではありません。
この関係を正しく整理したい場合は、以下の記事で詳しく解説しています。
→ SCS第3階層・第4階層とは?★3・★4との関係を正しく整理
一般に、★4は★3より取得難度が上がるぶん、より高いリスクを扱う取引における信頼性を示せます。どちらを目指すべきかは、取引先の要請と自社が担うリスクの大きさから判断することになります。
取得しなかった場合の機会損失
ここまではメリット側を中心に解説しましたが、裏を返せば「取得しない」という選択にもリスクがあります。取引条件として★3以上の取得を求める発注企業が今後増えていけば、未取得の状態は新規取引の機会損失につながりかねません。すでに取得している競合他社がいる場合、同じ入札・商談の場で比較されたときに不利になる可能性もあります。
未対応のまま放置した場合に具体的にどのようなリスクがあるかは、以下の記事で詳しく整理しています。
→ SCS評価制度に未対応のリスクとは?取引停止の実例で解説
メリットを得るまでのステップ
SCS評価制度のメリットを得るまでの大まかな流れは、次のとおりです。
- 現状把握:自社の現状のセキュリティ対策レベルを、要求事項に照らして棚卸しする
- レベル決定:取引先の要請や自社が担うリスクをふまえ、目指す★のレベルを決める
- 対策実施:現状とのギャップを埋めるため、不足している技術的対策・規程整備を進める
- 評価・申請:★3であれば専門家確認、★4であれば第三者評価・技術検証を経て申請する
- 維持・更新:取得後も記録を継続し、有効期限(★3は1年・★4は3年)の更新に備える

このうち最も時間がかかりやすいのが2と3の間、つまり「現状とのギャップを正確に把握し、優先順位をつけて対策を進める」工程です。ここを曖昧なまま進めると、対策の手戻りが発生しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
ここまでの内容と重複する部分もありますが、経営層への説明の場でよく聞かれる質問を、Q&A形式で改めて整理します。
Q. SCS評価制度の取得は義務ですか? A. 現時点で法的な全企業義務化のアナウンスはありません。ただし、発注企業が取引条件として★3以上の取得を求める動きが今後広がる可能性があり、実質的に対応が必要になる企業は増えていくと見られています。
Q. SCS評価制度を取得するとどんなメリットがありますか? A. 取引先ごとのセキュリティチェックシート対応の負担軽減、取引先からの信頼向上、経営層への説明のしやすさなどが主なメリットです。あわせて、サプライチェーン攻撃の踏み台になるリスクを下げる実務的な効果もあります。
Q. ISO27001やPマークを取得していても、SCS評価制度のメリットはありますか? A. 既存認証で一部の要求事項はカバーできますが、SCS評価制度独自の項目(取引先管理など)は別途対応が必要です。取引先から専用の指標を求められる場合、取得のメリットは既存認証とは別に存在します。
Q. 取得後、メリットはずっと続きますか? A. ★3は1年、★4は3年の有効期間があり、更新のための運用(教育記録・パッチ適用記録など)を継続する前提です。取って終わりではなく、更新を見据えた運用体制づくりまでがセットだと考えておくと安心です。
Q. ★3と★4、どちらを取得するとメリットが大きいですか? A. 目指すレベルは取引先の要請や自社が担うリスクの大きさで決まります。★4は第三者評価・技術検証まで含むぶん取得難度は上がりますが、より高いリスクを扱う取引での信頼性を示せます。判断に迷う場合は、まず自社の現状把握から始めるのが安全です。
まとめ
SCS評価制度の取得には、取引継続・信頼向上・経営層への説明のしやすさなど複数のメリットがあります。一方で、取得後の維持コストや対応費用も発生するため、メリットだけでなくコスト構造も含めた投資対効果で判断することが大切です。「取得すれば安心」と早合点せず、更新までを見据えた運用体制まで含めて検討することで、メリットを一時的なものにせず継続的な効果として得られます。何から手をつければよいか判断がつかない場合は、まず自社の現状把握から相談を始めるのがおすすめです。
SCS評価制度の全体像から確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
→ SCS評価制度とは?2027年から始まる新制度の全体像と対象企業
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